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近年の強い台風襲来は、1950年代の再来か

近年の強い台風襲来は、1950年代の再来か

◆令和元年の歴史的な台風災害から一年

 気象庁が42年ぶりに命名した2つの台風、「令和元年東日本台風(静岡県上陸)」「令和元年房総半島台風(千葉県上陸)」。これらの上陸時の最大風速は、いずれも80ノット(40メートル)で、1991年以降では東日本に上陸した台風としては最強でした。

こうしたことから、近年は地球温暖化等の影響により上陸する台風が強くなっているのではないか、という見解を耳にすることがあります。そこで、気象庁の統計がある1951年までさかのぼって上陸した台風の勢力を分析しました。「強い勢力」の台風というのは、気象庁では中心付近の最大風速が64ノット(33メートル)以上と定義されています。便宜的に、上陸時の中心付近の最大風速が65ノット以上の台風=「強い勢力で上陸した台風」として10年ごと(2011年からは2019年まで)に集計したのがグラフ(下記参照)です。

◆統計期間で変わる強い台風の上陸数

このグラフを見ると、統計の取り方で見解が変わることがわかります。グラフを半分にして、右側だけ見ると確かに増えています。しかし、左側も含めて見ると1950年代は多かったけれどもその後減少し、1980年代を底にして再び増えていることがわかります。つまり、近年の30年間だけのデータで解析した人は強い勢力で上陸した台風は増えているという見解になりますが、台風の統計開始以来およそ70年間のデータで見ると上陸した台風の強さに周期があることがわかります。

                                                                                        (気象庁のデータを元に筆者が作成)

◆強い台風の上陸数には周期がある

このように、統計というのは取り扱う期間によって大きく変わるので、できるだけ長い期間のデータで解析する必要があります。特に、地球温暖化のような長期間の変動にはなおさらそのことが言えます。結論を言うと、強い勢力で上陸した台風の数には多い時期と少ない時期の周期があり、現在は多い周期に入っています。もし、これが地球温暖化の影響が大きいとしたらグラフは右肩上がりになりますが、そうではないことが一目瞭然です。その他に何らかの理由があると考えられます。正直、理由はわかりませんが、太平洋の海面水温には数十年周期の自然変動があるのでこれが関与しているのではないか、と思っております。

◆近年の強い台風上陸数の増加は、1950年代の再来か

近年は、1950年代以来、強い勢力で上陸するフェーズに入っていることは間違いありません。1950年代の強い台風を調べてみました。1954年洞爺丸台風(上陸時最大風速75ノット)、1958年狩野川台風(上陸時最大風速70ノット)、1959年伊勢湾台風(上陸時最大風速140ノット)と歴史に残る甚大な災害をもたらした台風が上陸していたことがわかります。近年の豪雨回数の増加もこれらとリンクしていることは容易に推測でき、地球温暖化以外の視点で台風や豪雨の長期変化を研究、議論する余地が十分にあります。

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