
2020年8月17日、静岡県浜松市で41.1℃を記録しました。これは、2018年7月23日に埼玉県熊谷市で観測された41.1℃と並んで国内最高気温タイ記録です。
◆この夏の猛暑の原因は、高気圧の二段重ね
この夏は、埼玉県や群馬県でも40度を超えた地点がありました。8月以降、台風がフィリピン周辺で多数発生したため、上空1万6千メートル付近のチベット高気圧が日本列島に張り出し、地上の太平洋高気圧を強めたため、高気圧の二段重ねとなりました。上空から地上まで高気圧となる典型的な猛暑の気圧配置になりました。
◆浜松の高温は、「西風」フェーン現象
これに加えて、浜松市では連日の晴天による地面の蓄熱効果の影響もありました。。浜松市では国内最高気温が出る前々日の8月15日は最高気温が39.7℃、前日の16日は40.2℃と日に日に気温が上昇しました。当日は朝から気温が高く最低気温は27.8℃、日中は晴れてフェーン現象が加わりました。また、浜松市の風向きは午前中から西風でした。浜松の場合、西側には標高の高い山々があり、この山を越えてフェーン現象を起こしてきた熱風が浜松の記録的な猛暑をもたらしました。夏は南風が吹くと気温が高くなるイメージですが、浜松の場合は南風が吹くと比較的涼しい海風が流れ込んで気温の上昇が鈍くなります。
◆長期的には、都市化や地球温暖化の影響も
長期的に見ても浜松は気温が高くなっています。100年で1.4℃の気温上昇傾向が見られます。これは、都市化によるヒートアイランド現象に加えて、二酸化炭素などの温室効果ガスの増加による地球温暖化で年々気温が上昇しているものとみられます。1882年の観測開始以来の気温データによれば、年平均気温の歴代の高い記録の上位10番目まで高い順に並べると、①2019年、②2016年、③2018年、④2004年、⑤1998年、⑥2015年、⑦2013年、⑧2007年、⑨1994年、⑩1990年となっています。いずれも、1990年以降の30年間となっています。
また、浜松市の35℃以上の猛暑日日数は、年代別に見ると1990年代以降の増加が顕著に表れています(図1)。移転や観測機器の変更などがありますが、1890年代から1980年代までの90年間は年代ごとに見ても猛暑日日数は10年間で最大20回程度となっています。ところが、1990年代以降、急激に増加して2010年代には61回を数えました。
図1 気象庁のデータを元に筆者作成

◆浜松の観測地点の移転も高温に影響か
浜松市の観測地点は2012年11月15日に移転しており、この移転による観測環境の変化も少なからず影響しているのかもしれません。移転前の観測地点には西側に湖があり、海から近いところにありました。今回の屋内最高気温の記録は西風の影響ですから、西側の湖があるとないとでは気温に微妙な影響を及ぼしていたとみられます。しかし、移転後は元の観測地点より北の内陸部に位置し、比較的涼しい南側の海風や西側の湖の影響を受けにくい場所にあります。